いつも読んで頂きありがとうございます。
今回は「小児の眼鏡処方」について!
小児の眼鏡合わせのなかでも、特に初めての眼鏡処方では悩む・迷うという視能訓練士の方々も多いと思います。私自身、初めての眼鏡処方は難しく感じていたことを覚えています。
今回の記事では、
- 小児の初めての眼鏡合わせ
- どのような検査をして判断するの?
- 保護者の方での説明や伝え方は?
症例を提示しながらこのあたりをまとめていきます!
※この記事では、弱視・斜視等の治療用眼鏡は含みません。矯正視力・立体視機能良好・眼位異常はないものとして話を進めていきます。
【初めての眼鏡】特に悩むのはこのケース!
小児の初めての眼鏡!通常の眼鏡(治療用眼鏡は含まない)で特に処方に悩むのは、裸眼にて片眼:視力良好、他眼:視力不良のケース。
このような度数に左右差があるケースでは、
- 視能訓練士の立場からは、「両眼視できている?」、「早くから眼鏡を装用した方が慣れやすい」という考えで眼鏡処方を検討することも。
- 子どもたちは「見えるよ!」と言っている。
- 親御さんは子どもが見えると言っているのに「なぜ眼鏡が必要?」と感じる方も。
仮に両眼とも近視があり、裸眼で両眼とも見えていなければ子どもたちも「見えにくい」と言い、親御さんも本人が見えていないなら眼鏡を作ろうと思い、理解は得られやすいですよね!
【実際の臨床現場では?】このように検査を進めていこう!
上記した度数差があるケースでの眼鏡処方の流れをまとめていきます!
- 初めての眼鏡処方を検討するケース
- 片眼は裸眼視力、他眼は近視で裸眼視力不良
- 本人、親御さんへの説明はどうしたらいい?
例を出してみます!
例)7歳男児 学校健診で左眼の視力低下を指摘
S) 現在、小学1年生で黒板見えている。席は一番後ろ。眼鏡を作ったことはない。
<当日の検査結果>
[レフ値]据え置き型オートレフケラトメータ
<R> SPH CYL Axis <L> SPH CYL Axis
1 -0.5 -0.25 5 9 1 -2.75 -0.25 5 9
2 -0.5 -0.25 5 9 2 -2.75 -0.25 5 9
3 -0.5 -0.25 3 9 3 -2.75 -0.25 5 9
<-0.5 -0.25 5 > <-2.75 -0.25 5 >
*Axisの横の9はレフの信頼係数、一番下の<>内の値がレフの代表値とする。
[ケラト値]
R:AVG 7.90mm、L:AVG 7.90mm 角膜乱視はなし
[眼軸長]
R:23.75mm、L:24.45mm 左眼が0.7mm長い
[視力検査] 字ひとつ、指さし
RV=1.5(n.c.)
LV=0.15(1.5 ✕ S-2.25D) 左眼のみ近視あり
BV=1.5 本人はよく見えると言っている
※冒頭で書いたように、眼位異常はないものとして話を進めています。
あなたがこのような流れで検査をしたとして、
ここから先どのように考えますか?
- 本人は見えていると言っているし裸眼で様子をみてもらう?
- 眼鏡を作った方がいい気がするけど、、、
- 眼鏡処方をするとして親御さんへの説明がうまくできるかなまだ自信がないな。
このようにいろんな思いがあると思います!
両眼で遠く・近くを見れている?←これを意識することで、「眼鏡処方の必要性が納得して理解できる」、「本人との接し方が上手くなる」、「親御さんへの説明もどんどん上手くなっていく」!
【子どもとの接し方】実際に体験してもらおう!
ではどのように眼鏡合わせをしていくのか?具体的な内容に入っていきますね!
眼鏡をかけるのは子ども本人!本人に眼鏡をかける意味を知ってもらうことはとても大切です。
日々、子どもたちと接しているなかで、「子どもって素直だな~」と感じる場面が多くあります。実際に体験してもらうことで眼鏡を作る意味を知ってもらう!
上記した例のケースにおいて
- 黒板見えてる?という質問では→見えるよという返事が返ってくる。
もう1歩踏み込んで質問してみる!→視力表を見てもらい、片眼ずつ視標を見てもらう!この状態で片眼ごとの見え方を聞く!
- まずは裸眼での見え方の左右差を確認。←左眼が見えにくいと返答。
- 次に矯正下での見え方の左右差を確認。←両眼ともよく見えると返答。
本当に素直なので、子どもさんによっては矯正下では「これだとめっちゃ見える」とニコニコして言ってくれる子もいます。
※眼鏡処方は医師の指示のもと行われるものなので、勤務先の医師の方針に従うことを前提として、今回の記事の内容を1つの方法として参考にして頂けたらと思います。
親御さんへの説明のポイントは?
初めての眼鏡処方の際には親御さんにも「眼鏡装用の必要性・理由」を正しくご理解いただくことも大切。
今回のケースの場合は、右眼の裸眼が良好なので、本人は見えていると言っている!
「本人が見えているのに、なぜ眼鏡?」と思われる親御さんもおられます。
- 遠近感(立体視)は両眼を使った機能であること
- 眼鏡で両眼の見え方のバランスを整えること
この2点を自分の言葉で説明できるようになると、保護者の方からの理解がどんどん得られるようになっていきます。説明って本当に難しく経験が必要なので、失敗することもあると思いますが、自分なりに試行錯誤しながら頑張ってみて下さい。
立体視検査をしてみるのもあり!
明らかに矯正下で立体視が良好になる場合は、眼鏡をかけることで「両眼でしっかり見れている」という裏付けにもなりますよね!検査結果を見る医師の先生も納得しやすいと思います。
【実際の臨床現場では?】~度数差のある眼鏡合わせ~
今回の記事で提示した例のように片眼が正視、他眼が近視である場合、実際の臨床現場では0.75D~1.0Dの度数差があれば、眼鏡処方を検討するケースも多々あります。→今後度数が進んだ時に眼鏡に慣れやすいように早めからかけておく!
臨機応変な対応ができる視能訓練士が理想的!
- 見え方の体験はしてもらったが本人がまだ眼鏡は強く嫌がっている。
- 親御さんがもう少し裸眼で様子をみたいという思いが強くある。
眼鏡の必要性を一通りご説明しても上記のように、現時点で眼鏡に対して強い抵抗感がある場合は、一歩引くことも大切です。
- 次回の学校健診で引っかかったら眼鏡を考えましょうか。
- いま以上に裸眼視力が下がったら考えましょうか。など
眼鏡を作る方向で押しすぎると親御さんの不信感につながることもあるので、臨機応変な対応ができるというのも視能訓練士として大事なスキル!
※眼鏡処方は医師の指示のもと行われるものなので、勤務先の医師の方針に従うことを前提として、今回の記事の内容を1つの方法として参考にして頂けたらと思います。
最後に
今回は、症例を提示して「小児の初めての眼鏡処方」についてまとめてみました。
話がわかりやすくなるように眼位異常は含まずにまとめましたが、眼位のことも絡めて考えると、今回の例のように片眼のみ近視があり、間欠性外斜視があったとします。
裸眼で過ごすと近視眼はぼやけてしまい遠見でXT優位になる可能性もある!遠見でXPに保ちやすくするために初めての眼鏡作成を行うというケースもあります!このように眼位も絡めて考えられるようになると、考え方の幅が広がるかなと思います。
最後になりますが、眼鏡処方は医師の指示のもと行われるものなので、勤務先の医師の方針に従うことを前提として、今回の記事の内容を1つの方法として参考にして頂けたらと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。