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今回は、「近視眼の小児の眼鏡合わせ」のポイントについてお話をしていきます。イメージがしやすくなるように、学校検診で視力低下を指摘され、眼科を初診で受診した場合として話を進めていきます。
①問診の取り方、②検査の流れ、③近視の進行抑制のためには低矯正or完全矯正?の3点です。
※今回の内容は、近視眼に限定した話となります。(屈折度に左右差なく、眼位異常はないもの。仮性近視、斜視・弱視は含みません)
①問診の取り方~ここをおさえよう~
勤務されている各施設ごとのルール・マニュアルがあると思いますが、学校検診で視力低下を指摘され、初めて眼科を受診した際の問診で私が意識していることを書いていきます!
必ず聞いている項目は、「小学校何年生か」、「席はどのあたりか」、「自覚的に黒板は見えているか?」、「保護者の方からみて気になることはないか」です。加えて「昨年までの学校検診で引っかかっていたか?」なども聞いておくと検査時の参考になると思います。
※眼疾患の既往・全身疾患の有無や、アレルギーの既往も聞いておくのがベストです。
初めての眼鏡処方時は納得してもらえる説明を!
近視によって裸眼視力がある程度低下している場合は眼鏡処方が必要になってきますよね。初めての眼鏡処方時は本人はもちろんのこと、保護者の方にも処方の理由を納得してもらうことが大切だと考えています。
初めての眼鏡処方の際は保護者の方に「なぜ眼鏡を作る必要があるのか」をしっかりと理解して頂くことが重要です。→この説明をしっかりできるかはORTのスキルとしてすごく大切だと感じています!
私たち視能訓練士からみえると、今回の内容のテーマにしているような屈折度の左右差がなく、眼位異常のない近視眼は、日頃、眼鏡処方を行う頻度も多く、近視があるだけという判断で、処方時の保護者への説明が簡単になりがちなこともあると思います。→「裸眼視力が落ちているので眼鏡の処方箋を書かせてもらいますね」、「視力が悪いので眼鏡がいりますね」など。
ORTとして正しい眼鏡処方を行っていたとしても、上記のような説明を行うことでこのように捉えられる可能性があります。→「あそこの眼科に初めて行ったらいきなり眼鏡を作られた」というような形で。私自身が眼科関係者でなく、近視のことをまったく知らなければこのように感じると思います。
勤めている施設の評判はとても大切で、評判が上がることで、自分自身の待遇面の向上にもつながるかなと感じています。
説明のポイント!
説明の際は、①現在の裸眼視力(両眼視力も)、②近視の説明(裸眼で〇〇cmから近くは見えているが、そこから離れたら離れるほど見えにくい状態であること)、③必要な視力の目安(小学校〇年生であればどのくらいの視力があれば席が後ろでも黒板が見えるか・それに満たず本人も見えにくさを感じていること)を含める伝わりやすいかなと思います。正解はないので、伝わりやすい説明になるよう私自身試行錯誤しています。
併せて今後、度数が進むことも伝えておくようにしています。→「身長と同じように成長で目も大きくなり、〇〇くん(ちゃん)のように近視の要素を持つお子さんは度数が進む傾向にあるので、見えにくくなったら度数を上げる必要がある」→予め説明をしているので、今後度数を上げる際に本人、保護者の方の疑問がなくなり、説明がスムーズに進みます。
眼鏡処方時の説明は保護者の屈折度も意識しよう!
一緒に来院されている保護者の方の屈折度を意識するとより伝わりやすくなると感じています。
〇保護者の方は裸眼視力良好→ 上記のように詳しく説明をした方が伝わりやすい印象。
〇保護者の方も近視眼→ 近視の説明は簡単に、お子さんの今の視力・近視度数をしっかり伝えるとよい印象。
保護者の方の屈折度は必ず聞いている訳ではないですが、聞いておいた方が説明が伝わりやすいかな?と感じるときは聞くようにしています。
あとは、相手の顔をしっかり見ながら説明をし、「自分のしている話が伝わっているか?」、「説明を長いと感じられていないか?」などを気にするようにしています!
【番外編】~心因性が疑われる主訴・所見は?~
問診から様々なことが推測できます。以下の記事では若手視能訓練士の方々に向けて心因性視覚障害症例での「よくある問診内容」、「検査のポイント」をまとめています。

②検査の流れ
初診で受診をした際の検査の流れを簡単に書いていきます。
(冒頭にも書いたように、今回の内容は、近視眼に限定しています。屈折度に左右差なく、眼位異常はないもの。仮性近視、斜視・弱視は含みません)
例:8歳 男児
S)学校検診で視力低下を指摘。両眼ともB判定。
問診内容:小学校3年生、席は一番後ろで黒板見えている。お母さまより、検診で引っかかったのは初めてでテレビを目を細めて見ることがあり、気になっているとのこと。
検査の流れは、問診(上記のような形で)→ レフ・ケラト→ 眼圧→ 視力の順で基本的には測定を行っています。小学校低学年では調節の介入を考えて、レフは据え置き型だけでなくSVS(スポットビジョンスクリーナー)での測定もすると良いと思います。
ここで、眼位の測定については、学校検診で斜位・斜視の指摘があれば確認すると思いますが、できれば初診時は全症例で測っておいた方がよいと思います。主訴に「斜視のこと」、「複視のこと」がなくても斜視であることがあります。特に間欠性外斜視は多々あり、小学校高学年のお子さんなどにしっかり話を聞いてみると、「実は教科書が2個に見えることがあった」、「疲れたら変な感じで見えていた」などと言ってくれることもあります。
これに加えて、レフで近視が強く出る場合、仮性近視が疑われる場合では眼軸長の測定まで行っています。仮性近視については以下の記事にまとめています。

③処方度数は低矯正or完全矯正?
近視眼では今後の近視の進行をなるべく抑えたいですよね!私も新人時代に近視進行抑制を考えて処方度数をどうするべきかいろいろと調べていました。
「低矯正or完全矯正はどっちがいいのか?」 について書いていきます!
結論から書くと、
「現時点では、低矯正でも完全矯正でも近視の進行に臨床的な有意差はないが、極端な低矯正には注意する必要がある。」1)
ということが大切だと言われています。
1)平岡孝浩. クリニックではじめる 学童の近視抑制治療. 文光堂, 2021 ,36-37.
極端な低矯正を行わないように注意する!→ 網膜へのクリアな画像は眼軸伸長のストップサインとの報告もあるため、低矯正は0.5D程度までにしておく方が良いということ。1)
ただし、初めての眼鏡処方で近視度数がある程度ある時は、いきなり 0.5D程度の低矯正~完全矯正 度数での眼鏡処方は難しく、「かけやすさ」も考える必要がありますよね。私の場合、そのような時は眼鏡に慣れてもらうために一旦低矯正の眼鏡を処方し、1ヶ月くらいして慣れた頃に再度来院して頂き、0.5D程度の低矯正~完全矯正度数で処方をし直しています。
完全矯正度数で処方→度数的に長く使える!そのため、近視が軽い場合や眼鏡に慣れている場合は完全矯正度数で処方を行うことも多々あります。
また、今回は眼位異常はないものとして話を進めましたが、X(T)がある場合では遠見の像を鮮明にしてphoriaに保ちやすくするために完全矯正度数での眼鏡処方を行うなど、臨機応変に対応をしていきます!
最後に
近視抑制治療は、マイオピンでの点眼治療、オルソケラトロジー、多焦点SCL、サプリメントなど様々ありますが、今回は処方時の度数を低矯正or完全矯正にすることで近視進行に影響があるのかについてまとめてみました。いろいろな考え方があると思うので1つの考え方として参考にしてみて下さい!
↓最近、購入した本の中でもおすすめの1冊です。