今回は「心因性視覚障害者」について!
成人でも起こることはありますが、主に10歳前後の小児で起こることが多いとされています。
心因性視覚障害と聞くと
- 本当は見えているのに視力が出ないもの
- トリック法、中和法で視力検査を行う
などいろんなイメージがあると思います!
心因性視覚障害が疑われる場合に状況によっては「調節麻痺薬での屈折検査」、「視野検査」、「網膜電図検査」まで行い器質的疾患の有無を鑑別することも。若手視能訓練士にとって悩むことが多い「心因性視覚障害での検査の進め方」についてわかりやすく解説していきます!
- 心因性視覚障害の検査に対する苦手意識を克服できる!
- 問診から「心因性かも?」と予測できるようになる!
- 心因性視覚障害を疑うケースでの検査の進め方がわかる!
心因性視覚障害とは
心因性視覚障害とは、心理的な原因によって視力低下、視野異常などを引き起こします。7歳~12歳の女児に多いとされ、眼には器質的な疾患を認めません。1)
1)日本弱視斜視学会HP参照
通常通り問診を行う。初診や再来初診であれば主訴に加えて、「学年」、「座席の位置」、「見えにくさを感じているか」など伺う。
*学校健診で「急にA→Dになった」など変化があればしっかりカルテに記載する!
レフ・ケラト、眼圧、視力検査はほとんど眼科で行う。それ以降の眼位検査、立体視検査などを行うかは施設の方針によって様々です。
視力検査で視力が出ない場合に「器質的疾患によるものでないか」を医師が判断。必要であれば追加検査を行い器質的な疾患がなければ「心因性視覚障害」と診断される。
医師の判断で器質的疾患の除外ができた場合は「心因性視覚障害」として様子をみることになります!
問診を取る際のコツ・ポイント
新人視能訓練士にとって問診を取ることは難しさを感じやすいもの。始めは難しくても経験を積むことでだんだんと慣れていきます!
学校健診で視力低下を指摘されて眼科を受診したケースを例に考えてみます!
- 学年は?、座席の位置は?
- 学校健診での結果は?
- 黒板は見える?、普段見えにくさを感じるか?
まずはこれくらい書けていたらOK!
これにプラスして本人、保護者との会話から得られる情報もカルテに記載できるようになるとバッチリ!「前回の学校健診の結果は?」、「親御さん:そろそろ眼鏡を作ろうと思う」など。中には本人が眼鏡をかけたいと言うケースも。
茶色の文字が会話を参考に付け加えた部分。慣れてきたら会話をしながら問診内容を構成していくと視能訓練士としてスキルアップしていける!
慣れてきたら問診から心因性を予測できる!
ある程度経験を積んでくると問診内容から「心因性かも?」と予測できるようになってきます!
- 前回の学校健診はA(1.0以上)判定だったのに急にD(0.2以下)判定になった。
- 最近やたらと眼鏡をかけたがる。
- D判定なのに親御さんからは本人が見えにくそうにしていないように思う。
このようなフレーズがあれば「もしかしたら心因性かも?」ということを頭に入れて検査に進んでいきます!決めつけはNGです!あくまで問診内容は予測に使っていく。
環境要素の内容はかなりセンシティブな問題であることも。
- 学校でうまくいっていない
- 親御さんが単身赴任や離婚をして寂しい
- 塾や習い事が忙しくしすぎて精神的にしんどい
実際に環境要素が原因で心因性視覚障害になっているケースは多々ありますが、視能訓練士として良かれと思って「環境面で変わったことはありませんか?」という質問が相手の気分を害することも考えられる。
検査を行う上で一番意識していること
教科書での勉強や養成校の実習では「心因性=中和法・トリック法で視力を出す」イメージが強い!
検査を進めるうえで「器質的な疾患の有無」を鑑別するために必要な検査結果を集める意識を持つ!視力は出るに越したことはないが視力検査に時間をかけすぎない!
*視力検査時にトリック法、中和法は使うこともあるので手技は身に着けておきましょう!
【例を提示して解説】心因性らしい検査結果とは?
ここからが今回の本題です!「心因性らしい検査結果」の見方を解説していきます。難しい検査手技はまったく必要ありませんのでぜひ参考にしてみて下さい。
- 器質的疾患による視力低下は矛盾がないことが多い。
- 心因性視覚障害による視力低下では矛盾があることが多い。
各検査結果の矛盾とは
例を出して説明をしていきます。
例)8歳女児 学校健診で裸眼にて、両眼の視力低下を指摘され来院。
問診内容:学校健診で両)D判定、席は一番後ろだが黒板は見えている。
母:見え方は問題なさそうだが、去年までAだったのでそこが気になる。
以下に検査結果を提示します!

レフを見て「屈折異常は大きくなさそう」という前提をもとに遠見視力検査。明らかな視力低下あり。「もしかしたら心因性かも?」という予測を立てながら検査を進めていく!
遠見視力不良。本当に視力が出ないのか再現性の確認で近見視力を測定。近見視力も出ない。ここまでの検査結果では「心因性による視力低下 or 器質的疾患による視力低下」かの判断はできない。鑑別のために検査を進めていく!
眼位検査、立体視検査をやってみる!眼位、立体視良好。「立体視は視力と眼位が良好で得られる機能」、視力不良ケースなのに立体視良好。ここで矛盾が出た。
このような形で進めることが多いです!
*特に決まりはないので勤務先の施設の方針に沿って下さい!
これが今回一番お伝えしたかった「心因性らしい検査結果・矛盾を探す」ということ!
*各検査で矛盾がみられず器質疾患による視力低下が否定できない場合は医師の指示で網膜対応検査、GPなどの視野検査を行うことも。ケースバイケースで対応していく。強固な心因性視覚障害では網膜電図検査(ERG)まで行うことがありました。
視力検査に時間をかけすぎずいろんな検査をしてみる
小児検査は集中力との闘い!小学校低学年では集中力が長続きしないことも多々ある。
視力検査だけに時間をかけて「結局視力出ない+集中力が切れる」は一番ダメなパターン。いろんな検査をやることは気分転換にも繋がる!
潜伏遠視の確認にはSVSがおすすめ!
スポットビジョンスクリーナー

最近ではスポットビジョンスクリーナー(SVS)がある施設も多いと思います!両眼開放で測定できるので通常のレフ測定に比べて調節の介入を防げることが強み!
心因性に「屈折異常」を合併しているケースも!
「心因性視覚障害+近視」のように屈折異常を合併していることがある。眼鏡処方が必要な場合では度数調整に苦戦するケースがあります!
- 心因性っぽい反応だが、近視がありそう。
- 眼鏡が必要だが度数調整がかなり難しい。
このようなケースではサイプレジンによる調節麻痺薬を使用した屈折検査をおすすめします!
*勤務先の医師の判断によると思いますが、調節麻痺下での屈折検査を行うことで適切な度数での眼鏡処方が行えます!
最後に
今回は「心因性視覚障害の検査の進め方」について!
新人視能訓練士の方は視力を出すことに必死になりがちになりますが、検査時の一番の目的は「器質的な疾患の有無」を見極めるために検査結果を集めること!
- トリック法、中和法も手技としては大切
- だけど視力検査ばかりに時間をかけすぎないように!
- いろんな検査をしてみて矛盾がないかチェックしていく
経験を積むことで確実に視能訓練士としてスキルアップしていきますので、一緒に頑張っていきましょう!まずはやってみようという気持ちが大切です!