心因性視覚障害の検査を行う上で大事なこと

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心因性視覚障害と聞くと、見えているはずなのに視力が出ないトリック法・中和法で視力を出すというイメージの方が多いのではないでしょうか?私も働きたての頃は視力を出すことに必死でした。

1年目の頃、必死に視力を出そうと検査をしていると、先輩ORTの方に「心因性は視力を出せることに越したことはないけど、心因性らしい検査結果を得られたらいいんだよ!」とアドバイスをもらい、考え方の幅が広がりました。

そこで今回は、私が検査を行う上で大事にしている『心因性らしい検査結果』について紹介をしていきます!

目次

心因性視覚障害とは

まずは、心因性視覚障害の定義を書いてみます。

心因性視覚障害とは、心理的な原因によって視力低下、視野異常などを引き起こします。7歳~12歳の女児に多いとされ、眼には器質的な疾患を認めません。1)

私たち視能訓練士が検査を行い、医師に器質的疾患の有無を評価してもらうことになります。

1):日本弱視斜視学会HP参照

心因性視覚障害は大人にもみられることはありますが、小児に多い疾患です。学校検診で視力低下を指摘され来院した子が心因性視覚障害がだったというケースは多々あります。

※今回の内容は小児の心因性視覚障害に絞って、話を進めていきます。

よくある問診内容

問診の内容も重要です。

臨床経験を積んでいくと、「問診の内容から、心因性が考えられるかも?」と予測して検査を進めていけるようになります。

いくつか問診内容の例を挙げてみます。

①半年前の学校検診で、A(1.0以上)判定だったのに急にD(0.2以下)判定になった。
②最近やたらと眼鏡をかけたがる。
③学校検診で引っかかったが、親御さんからは本人が見えにくそうにはしていないように思える。
→例として上記の3つを挙げてみましたが、他にも環境の要因(転校、両親の離婚)など理由は様々です。

ただし、問診の情報だけで心因性と決めつけて検査を始めるのは危険なので、問診はあくまで心因性の可能性を頭に入れるためのものだと考えて頂ければと思います!

検査を行う上で重要なこと

教科書での勉強や、養成校の実習では、中和法・トリック法で視力を出す練習を数多く行うため、なんとか視力を出そうと検査を行うと思います。それも重要な技術なのですが、実際の臨床ではそのような方法を用いて視力を出すことが一番重要ではない場合があるということを知って頂ければと思います。

心因性視覚障害において重要なことは、今起こっている視力低下や視野異常が精神的なものか器質的な疾患によるものかを判別することだと考えています。
つまりORTとして検査を行う上で、『心因性らしい検査結果』を見極める・判断する能力が重要だと思っています。

※もちろん中和法・トリック法で視力を出せる能力も重要だと感じていますが、今回は「心因性らしい検査結果」ということを伝えたいので、ここに焦点を当てて話を進めていきます。

『 心因性らしい検査結果 』とは【1番伝えたいこと】

ここからが今回の本題です!『心因性らしい検査結果』の出し方・見方を解説していきます。→難しい検査手技は、まったく必要ありませんので、ぜひ参考にしてみて下さい。

各検査の結果を照らし合わせた際に矛盾がないかを確認する!→器質的疾患による視力低下は各検査に矛盾はないが、心因性では矛盾があることが多いです。

各検査結果の矛盾とは

例を出して説明をしていきます。

例)8歳女児 学校検診で裸眼にて、両眼の視力低下を指摘され来院。

問診内容:本人より、席は一番後ろだけど、黒板は見えている。お母さんより、学校に行くことを嫌がることはあるが、見え方は問題なさそうとのこと。

以下に検査結果を示します。

 [レフ値]

 <R> SPH   CYL  Axis     <L> SPH   CYL  Axis 

  1  -0.5  -0.25   5  9    1  -0.5  -0.25   5  9           

  2  -0.5 -0.25   5  9     2  -0.5 -0.25   5  9                

  3  -0.5 -0.25   3  9     3  -0.5 -0.25   5  9                

   < -0.5 -0.25   5  >       < -0.5  -0.25   5  >

[ケラト値]                               

 <R>   mm     D   deg  <L>   mm     D   deg

  R1   7.49   45.00  171   R1   7.49   45.00  171             

  R2   7.34   46.00   81   R2   7.34   46.00   81               

 AVG  7.42   45.50       AVG  7.42   45.50              

 CYL         -1.00   171  CYL         -1.00   171    

視力検査:RV=0.06(n.c), LV=0.04(n.c) ← 中和法、トリック法、Planeレンズを用いても視力上がらず。

遠見視力の検査結果から、レフ値の度数に対して明らかに裸眼視力が出ていないことがわかる。次に近見視力を測定してみる。レフ値をみると裸眼で近見視力が出る眼であることが予想できます。

nRV=0.06(n.c), nLV=0.06(n.c) ←近見視力も出ない。

※ここまでの検査結果では、心因性による視力低下か、器質的な疾患による視力低下なのかがわかりません。

次に眼位、立体視機能検査を行います。

眼位:APCT(s.c) far 4⊿XP、near 8⊿XP ←眼位異常なし。

TST(s.c):Fly(+)、animal3/3、circle9/9 ←良好。TSTは楽しそうにやってくれる!

ここで視力・眼位と立体視に矛盾が生じています!→ この症例で、本当に器質的疾患による視力低下がある場合はTSTは難しいため、この視力低下の原因は心因性である可能性が高くなる。

立体視は、①視力が良いこと、②斜視がないことの2つの条件が揃って得られる機能。
本症例は、視力検査時、自覚的には遠近ともにかなり不良で、眼位は異常なし。しかし、TSTは良好。→視力が良好である可能性が高い。

このような検査結果が得られると、中和法やトリック法で視力を出すことができなくても心因性である可能性が高いということができます。→ これが今回お伝えしたかった『心因性らしい検査結果』という考え方になります。

※各検査で矛盾が見られない場合(器質疾患による視力低下が否定できない場合)は、必要に応じてBagolini線条試験やGP・HFAなどを行う場合もあります。より強固な心因性視覚障害疑いの症例では、網膜電図(ERG)まで行うこともありました。

最後に

最後に、視能訓練士として、心因性視覚障害の検査を行う上で重要なことを書かせて頂きます。

検査時に『心因性らしい検査結果』を心がけることは大事ですが、大前提として心因性と決めつけて検査を行わないことが重要です。

視能訓練士として、検査を行う上で、視力低下につながる器質的疾患が隠れている可能性も含めて、検査を行っていくことが大切だと感じています。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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