今回は、「ウェーブフロントアナライザー(WFA)」について!
正しく撮ることはできるようになったけど、「結果から何がわかるのか?・見方が難しい!」という経験ってありますよね。私自身もそうでした!
そのような経験から、今回は代表的なKR-1Wという機器の実際の検査結果を使って用語を解説していきます!
ウェーブフロントアナライザーとは?
まずは機器の説明をしていきます!
出典:KR-1W |株式会社トプコン|Topcon Healthcare|APAC(JAP)
オートレフラクトメータ、オートケラトメータ、角膜形状解析(プラチドリング)、波面収差解析(Hartmann-Shackセンサー)を評価。波面収差解析を用いることで見えにくさの原因となる高次収差の要因を知ることができます。1)
1)高静花ほか. “波面収差解析” 眼科診療マイスター Ⅰ診療と検査. 飯田知弘ほか編. 東京, メジカルビュー社, 2016 , 16 -17
(原理については今回省略をさせて頂きます)
【検査の対象】
角膜疾患、ドライアイ、屈折矯正手術や白内障手術の術前収差の確認などが挙げられます!
実際の検査結果を使って用語を解説!
今回使用する解析結果マップについて
【ウェーブフロントアナライザーの解析結果】
- マルチマップ
- 角膜収差マップ
- コンポーネントマップ
- ゼルニケベクトルマップ
- 経時変化マップ
- IOLセレクションマップ があります。
このうち、今回は最もスタンダードなマップであるマルチマップ(上図の緑枠部分)とIOLセレクションマップ(上図の赤枠部分)の2つを使って用語解説をしていきます!
【10項目】用語を解説していきます!
下図の中に番号をつけていますので、番号と照らし合わせながら見て下さい!
特に【⑤眼球全収差マップ】と【⑥眼球高次収差マップ】の項目は、若手視能訓練士の方にとって面白い内容だと思いますので、より詳しく書いていこうと思います!
【①角膜マイヤー像】
角膜にプラチドリングを投影した画像。この画像を基に角膜に関する解析が行われ、測定時の瞳孔径も表示されます。
【②角膜Axial(角膜屈折力)マップ】
角膜屈折力の分布を表示するマップ。ケラト値(R1:弱主経線、R2:強主経線)が表示されます。
【③角膜高次収差マップ】
角膜高次収差を表示するマップです。解析範囲が4 mm、6 mmの角膜高次収差がRMS値で表示されています。
RMSとは?→ 「Root mean square」の略で眼球高次収差を示すものです。
【④ハルトマン像】
眼球内部から瞳を通って反射してきた点像です。この画面からレフ値、眼球全収差、高次収差などが計算されます。
【⑤眼球全収差マップ】
眼球屈折の低次収差を含む全ての収差マップです。マップ下部にはレフ値が表示されています。
マップの見方がわかってくると結果を見ることがどんどん楽しくなってきます!表示されているレフ値とマップ中央の色を照らし合わせると面白いですよ!
上図の⑤部分のマップの色を見て頂くと、マップ中心は淡い寒色系を示しており、近視の傾向があることがわかる!レフ値を見るとS-2.0D程度の弱い近視眼となっています。
【⑥眼球高次収差マップ】
眼球屈折の高次収差を表示するマップです。眼鏡等で矯正できない不正乱視を示します。マップ下部には解析範囲が4 mm、6 mmの眼球高次収差がRMS値で表示されています。
〇低次収差:眼鏡で矯正できる近視、遠視、乱視成分。1)
〇高次収差:眼鏡で矯正できない近視、遠視、乱視成分。1)
1)高静花ほか. “波面収差解析” 眼科診療マイスター Ⅰ診療と検査. 飯田知弘ほか編. 東京, メジカルビュー社, 2016 , 16 -17
つまり、WFAにて、高次収差成分の多い眼は眼鏡での矯正が難しいということになる!
【⑦ランドルト環シミュレーション】
眼鏡等で完全矯正した場合の参考表示です。上段から20/100(0.2)、20/40(0.5)、20/20(1.0)視標の見え方を示します。前述した高次収差の大きい眼ではこのシュミレーションでのラ環がブレて表示されることになります。
【⑧IOLセレクションマップの角膜高次収差】
⑥で書いた眼球高次収差マップと意味合いは同じです。IOLセレクションマップでは高次収差の数値を色分けして表示をしてくれています。0.3μmが境界値となり、0.6μmを超えると高値となります。0.3um以下は緑色で表示、0.3μm~0.6μm以下は黄色、0.6μmを超える値は赤色で表示されます。
【⑨IOLセレクションマップのケラト値】
角膜のアベレージケラト値から角膜中心部のケラト値を引いた値が表示されます。過去に角膜屈折矯正手術を施行した眼かどうかの見極めなどに有用です。
【⑩IOLセレクションマップの角膜球面収差】
眼内レンズには球面レンズと非球面設レンズがあります。術後の球面収差が0に近い値となるように球面 or非球面を選択していくことになります。球面レンズは正の収差、非球面レンズは負の収差を持っています。
※⑩の話に関しては視能訓練士がIOLの種類を全て決めることはないと思いますので、「角膜球面収差」についてなんとなくわかって頂けたら大丈夫かなと思っています。
以上、ここまでが用語についてのまとめとなります!
【実践編】測定時の4つのポイント
1. 眼瞼がかかる場合は、検者が開瞼しよう!
正確な解析を行うには、角膜全体を測定することが大切です。瞼が角膜を覆っている場合などは、検者が手で開瞼して測定を行うことになります。
2. 極端な小瞳孔眼ではこれを頭に入れておく!
私は1年目の頃、WFAを測定した際に中間透光体の混濁がないのに一部解析がかからず、かなりの時間をかけて何度も撮り直しをしてしまう失敗をしたことがありました。先輩ORTの方に確認をしてもらうと、「瞳孔が小さすぎたことが原因」で一部の解析がかかっていませんでした。かなりの小瞳孔眼でした。
瞳孔の大きさは、加齢に伴い縮小傾向となります。瞳孔の大きさは測定画面で目視できますので、小瞳孔眼では、眼球収差、内部収差、ランドルト環シミュレーションなどの解析がかからない可能性を頭に入れておきましょう!
3. 測定データが得られない場合
測定が難しい眼では、速度の設定を変えてみるのも1つの手となります。デフォルトの設定は100msとなっており、300 ms、400 ms、500 msと設定を変更できます。速度が早いほど測定はしやすくなりますが、データの信頼性は落ちるので必要以上に速度を上げないことも大切です!
4. マニュアル機能を上手く使っていく!
測定の方法は、オートとマニュアルがあり、オートモードはアライメントを自動調整した後、3 回連続で測定してくれます。「瞬きが多い」、「固視が難しい」、「挙上がしづらい」などの場合はマニュアルモードが有効です。私はマニュアルの方が撮影しやすいと感じるのでマニュアルをよく使います!
最後に
今回は、ウェーブフロントアナライザーについてまとめてみました。
様々な考え方・見方があると思いますので、1つの考え方として参考にしてみて下さい!
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