今回は「調節性内斜視の分類」について!
学生時代を振り返ると斜視の勉強は奥が深く、難しく感じていたことを覚えています。その中でも調節性内斜視の4つの型分類は難しく感じていました!
「調節性内斜視って?」、「4つの型とは?」などをわかりやすく解説!「暗記に頼らない考え方、理解して覚えよう!」を合言葉に一緒に調節性内斜視の全体像を勉強していきましょう!
*この記事は視能学第2版(文光堂)のp357-359を参考に内容を書いていますので、各型の定義を確認したいという方はそちらを見ながら読んで頂くとよいと思います!
なぜ調節性内斜視の分類が難しく感じるのか?
【 調節性内斜視の4つの型 】
- 屈折性調節性内斜視
- 非屈折性調節性内斜視
- 非調節性輻湊過多型内斜視
- 部分調節性内斜視
こちらが各型の名称です!学生時代に初めて見た時は、本当に戸惑いました。漢字ばかりで長いし、同じような名前でもう何が何だかわかりませんでした!
もう意味がわからないから「全部暗記してしまおう!」という方もおられると思います!
以下で考え方を解説していきます!
前提として、ここを押さえる!
調節性内斜視を理解するためには、まず「近見反応」と「AC/A比」を事前に理解しておくことが重要です!
近見反応で3つのことが起こる
近見反応(近見反射)とは、近くを見るときに、輻湊とともに調節と縮瞳が起こるというものです。1)
1)所敬. 現代の眼科学改定第12版. 金原出版, 2015 ,66.
近見反応:縮瞳、調節、輻湊はセットで起こる。
そのため眼が調節した際には「輻湊、縮瞳」も自然とセットで起こる。人間の眼の仕組み上そうなるようになっています!
今回のテーマである調節性内斜視では調節した際に「どれくらい輻湊するか?」という見方ができることで理解が深まっていきます!これはAC/A比という視標で表されます。
AC/A比ってそもそも何なのか?
生後18か月頃には、通常のAC/A比が成立していると考えられており、正常値は4±2(2~6)Δ/Dです。2)
2)丸尾敏夫. 視能学第2版. 文光堂, 2014 ,191.
いきなり4つの型を覚えなくて大丈夫
先ほど説明した 「近見反応」と「AC/A比」 の考え方も使いながら、調節性内斜視の詳しい内容に入っていきます!
いきなり4つ全ての型を理解しようとするのではなく、2つのグループ分けて考えていきます!
- 「屈折性調節性内斜視」と「非屈折性調節性内斜視」のグループ
- 「非調節性輻湊過多型内斜視」と「部分調節性内斜視」とのグループ
各型を理解するために、まずは「1. 屈折性調節性内斜視と非屈折性調節性内斜視のグループ」を理解することが重要です!
それを理解した上で、「2. 非調節性輻湊過多型内斜視と部分調節性内斜視のグループ」に入っていきます!
まずはこの2つの型を理解しよう!
まずは「1. 屈折性調節性内斜視と非屈折性調節性内斜視のグループ」から理解していきます!
屈折性調節性内斜視
屈折性調節性内斜視(refractive accommodative esotropia)とは、遠視があるため裸眼で明視をしようとして調節をかけた際に内斜視を引き起こすもの。遠視の度数は+2.0D~+8.0Dで、AC/A比は正常です。
<まとめ:屈折性調節性内斜視を理解して覚えるための考え方>
・屈折性→中等度以上の遠視があり、裸眼で生活をしている。
・調節性→裸眼で明視するために調節をかける。
中等度の遠視がある場合に裸眼で生活をしていると、物を見る際にたくさん調節が必要。調節量が多いためAC/A比は正常だが眼が内に寄ってしまう。これが屈折性調節性内斜視の考え方。
治療については、遠視度数が関係しているためアトロピンテストを行い、完全矯正眼鏡を処方することが一般的です。眼鏡装用をして斜視角が改善するか経過をみていきます。
*治療法は医師の指示によるものなので勤務する施設によって詳細(調節麻痺薬の種類決定、調節麻痺後の度数決定方法など)は変わってきます。上記の知識を前提として医師の指示に沿って臨機応変に対応していく。
非屈折性調節性内斜視
非屈折性調節性内斜視(nonrefractive accommodative esotropia)とは、AC/A比が高いために生じる内斜視で、近見の斜視角が遠見より10Δ以上大きいもの。
- 屈折異常がある場合、完全矯正下で遠見斜視角は消失するが、近見で内斜視が残る。
- 近見眼位測定時にc.c.にS+3.0Dにて斜視角が減少する← 近見時に調節をかける必要がないため。
今まで非屈折性調節性内斜視の別名である「高AC/A比型内斜視」に難しさを感じていた方もだんだん理解が進んできたのではないでしょうか?こういった部分が「暗記に頼らない理解して覚えるための考え方!」となります。
<まとめ:非屈折性調節性内斜視を理解して覚えるための考え方>
・非屈折性→”非”のため、屈折度の要素が内斜視に直結しない。つまり完全矯正時でも近見が内斜視となる。正視・近視・遠視でも起こる可能性はある。(中等度の遠視が最も多いとされる)
・調節性→この型は非屈折性。近見時の調節のことだと捉える。
つまり、正視or完全矯正下で、屈折の要素を取り除いても、AC/A比が高値のために近見で内斜視になってしまう。これが非屈折性調節性内斜視(高AC/A比型内斜視)の考え方。
治療については、アトロピンテストを行い、完全矯正の近用部にS+3.0D程度の加入をした二重焦点眼鏡を処方して経過をみていきます。
*治療法は医師の指示によるものなので勤務する施設によって詳細(調節麻痺薬の種類決定、調節麻痺後の度数決定方法など)は変わってきます。上記の知識を前提として医師の指示に沿って臨機応変に対応していく。
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ここまでの内容が理解できたらあと少しです!
- 「屈折性調節性内斜視」と「非屈折性調節性内斜視」のグループ
- 「非調節性輻湊過多型内斜視」と「部分調節性内斜視」とのグループ
ここまで大変だったと思いますが、あと少しです!あとは「2. 非調節性輻湊過多型内斜視と部分調節性内斜視のグループ」を考えていきます!
非調節性輻湊過多型内斜視
非調節性輻湊過多型内斜視(nonaccommodative convergence excess)とは、過剰な近接性輻湊による内斜視で、近見斜視角が遠見斜視角より大きいもの。
結論から書きます!「非屈折性調節性内斜視を疑い、近用加入しても近見の斜視角が減らないもの」が非調節性輻湊過多型内斜視です!
臨床現場で考えると、完全矯正下での眼位検査で近見のみ内斜視となる症例で、「非屈折性調節性内斜視」を疑い、c.c.にS+3.0Dでの近見眼位を確認。近見斜視角が消失(減少)するもの→ 非屈折性調節性内斜視、近見斜視角が減少しないもの→ 非調節性輻湊過多型内斜視という形でイメージしていく!
部分調節性内斜視
部分調節性内斜視(partially accommodative esotropia)とは、調節性内斜視として経過をみていて、眼鏡装用後3ヶ月以上経っても遠見、近見ともに10Δ以上の内斜視が残っているもの。
最後に
今回は「調節性内斜視の分類」について、「暗記に頼らない考え方、理解して覚えよう!」を合言葉にまとめてみました!分類に特化してまとめていて、各型の予後や治療法までは詳しく書けていないのでさらに勉強したいという方は教科書などを参考に勉強して頂ければ思います。
視能訓練士に関する勉強は、今回の調節性内斜視のように一見暗記するしかないように思えるものでも、考え方を知っていれば理解して覚えられる内容がたくさんあると感じています。(Bagolini線条試験や、Maddox double rod testなど)
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