この検査に関して、若手視能訓練士のみなさんは、ほとんどの症例で問題なくスムーズに撮影できると思います。ただ、時々、「撮るまでに時間がかかる」、「自分では撮れなかったが、先輩に代わってもらうと撮影できた」などの経験をされたことがありませんか?
教科書等に、原理や検査方法についてはたくさん書いてありますので、今回は内容を『臨床的な手技』に絞ってポイントを3つ紹介しようと思います。
※著作権の関係で撮影画像は載せずに話を進めていきます。
内皮細胞の検査対象
表1 内皮細胞の検査対象(文献1を参考に作成)
検査対象 | 検査目的 |
角膜内皮疾患(水疱性角膜症、Fuchs角膜内皮変性症、滴状角膜など) | 先天的な角膜内皮異常の評価、現状の角膜内皮の状態の確認。 |
眼内手術(白内障、硝子体)、屈折矯正手術、角膜手術の前後 | 手術前後の評価。角膜移植後の拒絶反応の観察。 |
レーザー虹彩切開術(laser iridotomy, LI) |
手術前後の評価。合併症として水疱性角膜症がまれに起こる。 |
ぶどう膜炎、外傷後 | ぶどう膜炎による、形質的、機能的な影響の評価。 外傷による内皮細胞への影響の評価。 |
コンタクトレンズ(CL)装用者 | 現在の角膜内皮の状態の確認。CL適応や種類変更の目安に。 |
この表は、検査対象をイメージしてもらうために作りました!軽く見て頂く感じで良いと思います。
こんな時どうする?【ここから本題です!】
① 額は付いているのに機械を押し込めずピントが合わない
この場合は、患者さんの彫りが深く、機械と角膜までの距離が足りていないことが考えられます。顔を傾けてもらい機械との距離を近づけて撮影を行うと良いです。
おでこが額当てにしっかり付いているが、ピントが合わず、機械を押し込みたいのに、これ以上押し込めない場合は顔を回してもらい機器との距離を近づけましょう!→右眼測定時は、左に顔を回して右眼と機械との距離を近づけるイメージです。
慣れてくると撮影前に患者さんをみて、彫りが深い場合は上記のようなことをあらかじめ予想しておき、ピントが合わない場合はすぐに顔を回してもらい撮影できるようになります。
② 角膜中心部で撮影が困難な場合
角膜の状態があまり良くない症例では、機械を押し込みピントを合わせようとした際に、ピントが合わずグチャグチャして見えます。中心部で測定困難な症例は、意外と周辺部ではピントが合いやすく、撮影できることがあります。固視灯を周辺部に提示したり、声掛けで固視を促したりして、周辺部での撮影を試みてください。角膜移植後などで角膜全体の状態が悪い場合などは周辺部でも撮影が難しいですが、以下のような場合は周辺部で撮影できることが多いです。
・円錐角膜→角膜中央から下方にかけて突出しているため、やや下方視してもらい角膜上方を撮影する。
・角膜潰瘍→潰瘍部は状態が悪く撮影困難だが、潰瘍のない部分は撮影できる。
※ 周辺部の内皮細胞を撮影した際は、どの部分を撮影したかコメントを残すことで経過観察をする際に有用です。
③ 解析結果の細胞画像と細胞密度は一致しているか
自動解析を行った際に、解析した結果に誤りがあることがあります。
普段から、測定した画像の個々の細胞の大きさと解析後の細胞密度(CD)の数値が一致しているかを確認するクセをつけておくと良いと思います。
自動解析した際は、上記のこと以外にも、六角形細胞出現率(HEX)が0%、100%になっている場合や各細胞のトレースがうまくできていない場合は手動での解析を行う必要があります。
手動解析時は、各細胞の中心を細胞を同心円状に20~30個程度、選択し解析を行ってください。細胞の中心を同心円状に選択することで解析後の細胞密度に誤差が出にくくなります。
最後に
今回はスペキュラマイクロスコープを撮影する上での臨床的な手技を3つ書いてみました。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
<参考文献>
1) 羽藤晋ほか. “スペキュラーマイクロスコピー” 眼科検査ガイド第2版. 飯田知弘ほか編. 東京, 文光堂, 2016 , 381 -384 .